1. HOME
  2. コラム
  3. 心の孤独が付いて回るウィズコロナ時代。お寺にできるのは「解決する」ことではなく、「隣にいる」こと。

心の孤独が付いて回るウィズコロナ時代。お寺にできるのは「解決する」ことではなく、「隣にいる」こと。

新型コロナウイルスの猛威により、急速に進みつつあるリモート化やオンライン化。実際に顔を合わせなくとも会社の事業が進んだり、会いたい友達と気軽に話せたりと、その利点が注目されつつあります。

一方で、人と出会う機会が急速に失われている分、孤独を感じるようになった人というのも多いのではないでしょうか。世帯を持っていれば同居家族との会話がありますが、単身者の場合はそうもいきません。

高齢者の孤立死や、若者の自殺など、日本には多くの問題が根付いてきましたが、昨今のコロナ禍により、その大きな原因となる「心の孤独」が加速してしまったようです。

コロナ禍を過ぎれば、こうした問題が解消されるとの見方もありますが、一度時代が変わってしまうことで、もう元のように実際に会って話すことが当然であった社会には戻らないとの見立てもあります。

「空間の共有」から「時間の共有」へと移っていくウィズコロナの時代においては、孤独というものも常に一緒に付いて回るのです。

このように喫緊の課題として挙がっている「孤独」ですが、この問題には沢山の機関が携わっています。メンタルクリニックなどの病院はもちろん、自治体などの行政も制度面からサポートしたりしていますが、中でもお寺という場所もこうした問題と大きく関わっており、潮音寺でも多くの信者さんたちのご相談に乗ってきました。

お寺というと、一般的には法事など、冠婚葬祭に関わる場所というイメージがありますが、一方で地域コミュニティにおける重要な拠点でもあります。震災時には場所を貸し出し、今回のコロナの際には物資を供給するなど、有事のライフラインにもなっているのです。

しかしこの「有事」というのは、なにも物理的な面だけではありません。人は、大きな被害を目の当たりにすることで町と同じように、当然、心の内側も混乱するのです。町や地域という単位ではなく、こうした個人のレベル、つまり「心の有事」にまで寄り添うのがお寺なのです。

以前潮音寺では、自閉症の傾向がある方がご相談に来られたことがあります。その方は時々お寺に話に来られ、1~2時間話をしていくのですが、内容は「他では変人扱いされ誤解されて暴力を受けた経験もある」といった壮絶なものでした。

最初は心を閉ざしていたのですが、たくさんお話をしていくうちに次第に打ち解け、次にはその方の色んな写真を持って来られて思い出話をしてくださったりして、徐々に心が快方に向かっていきました。

ここで重要なポイントは、「迷いを劇的に解決」したわけではない点です。お寺には、カウンセリングや〇〇療法といったように決まった流れがないため、じっくりと何度も話を聞き、ともに考えながら解決に導いていくことが可能なのです。

行政やクリニックなどでは、基本方針や専門的対処方法に基づいていますが、お寺の場合はまったくの任意であり、住職の個人的力量の中で随時行われています。このような「マニュアルの不在」こそが、お寺の個性と言えるかもしれません。

もちろん、孤独を感じた際にいきなりお寺を頼るというのも少々難しく感じられるかもしれません。ですので、仏教講座や坐禅会、写経会などを通じて築かれた関係、あるいは信者としてご相談をされたり、特に目的がなくても「住職いますか」とおしゃべりに来られる方もおられます。

ご相談に来られる年齢層はやはり高齢者の方が多いですが、最近では引きこもり問題など若者の孤独の問題も大きくなってきています。そこで、毎年神奈川西部の曹洞宗の寺が協力して、若者を対象に「こども禅のつどい」を実施するなど、より広い層に門戸を開けるように心掛けています。

歴史を持って古くから地域に根付いてきた場所だけに、相談に来られる方は「患者」や「相談者」ではなく、「ひとりの住民」として気軽にお越し頂ければと考えています。

しかし、そうした中でやはり私どもが頭を悩ませているのが、このコロナ 問題です。法事や葬式で普段会わない親族が一同に会する機会というのはそれなりに意味を持っていたのですが、このコロナの影響で法事などもできるだけ身内に絞って数名で実施するようになりました。地域とお寺の接点がどんどん薄くなっていくばかりです。

地域コミュニティの一旦を担ってきたお寺が離れていくということは、そのぶん地域の下支えがなくなっていくことであり、当然に人間関係も揺らいでいくと思われます。

現在、お寺と信者の関係は対面であり、リモートの体制にはなっていないのですが、そうした背景からオンライン化も推進していかなくてはと思っております。「空間の共有」から「時間の共有」へと移行しているいま、いずれはオンライン上でさまざまなご相談に乗れたらと考えている次第です。

「心の有事」が当たり前になった時代、個々の寺々では大きな力とまではいきませんが、全国7万ある全てのお寺が寄り集まって大きな網のようになれば、コロナ禍においても孤独に悩む人々を救う大きな力となるのではないでしょうか。

関連記事